死画像 / 死の騒めき、生を宿す画

『Not Found』と『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズのスタッフが結集して製作された新たな心霊ビデオシリーズ(?、となるか否か)。テーマは大仰に、「死をもたらす可能性がある画像」=俗称、『死画像』をピックアップしているとのことだが、その画像自体は、本シリーズの末巻に収められているだけであり、全体的なテーマとは呼びにくい(一応、そういったイメージは偏在しているが)。しかし、どの短編もアイデアとガッツとセンスが溢れており、クオリティは充分。しかも統一感は然程感じられないのにも関わらず、これが何故か上手く統制されている。いずれも現実への侵食(逸話)が倒置されていて死をしっかりと暗示させる恐怖の質感が全体に張り巡らされているのことがその要因として大きいと思われるが、単なる筆者の錯覚でしかないかもしれない。形式はオムニバスで簡単なインタビュー映像と共に映像集は形成されています。最初に言っておくと非常に面白い作品なので、引き返して取り敢えず観て頂くことを推奨します。以下ネタバレ。


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①錯視霊

母校の中学校へ(勿論、廃校である)訪れた男2人組が、少し開かれた窓と、微かに聞こえる女性の声に誘われて、霊障の瞬間に立ち会うという筋書きで、アルコールを摂取しているという、そのおフザケ感と忘却の余地があるという(これが忘れられない出来事になるとは・・・)薄皮一枚の設定が良い。それが効果的には映らないのだけれど、酔っていることによって問題部分(霊障部分)に気づかないというのは、「引き返せた」選択が失われている点においては製作陣の勘の鋭さも感じさせる。そして、この美術室という舞台が学園内でも随一を誇る不気味な空間なのは間違いがないし(典型であることを踏まえ)、そこに乱雑に散在している絵画が「風景画」とかでは無く「自画像」である点にホラーのトラップが敷かれている。映像の目的自体は「死を暗示させる不気味な絵画」とそこに現れる女の子の発見で、絵画を漁りながら「元カノに似てるね」などと笑い話に和ませながら画面に映る「自画像」の得も言われぬ恐怖はなんなのだろう。そうして暗視の切り替えを経て、ズームを仕掛けていると、思いもよらぬ「ビール缶」の音が響き渡り、カメラマンが置き去りにされた所で現れる紙の様に薄っぺらい女性の霊は、角度/方向によっては目に見えず、ある角度/方向によっては目に映るというタイトルに掲げられた〈錯視霊〉なのでありますが、ここで考察されるのが「霊の見え方」なのであることに関して、凄い面白いことをやっていると今は思ってます。


 

②死の報告者

自主映画団体の打ち合わせ・読み合わせのメイキング撮影時に大学の一室と大学の近辺で起きた死の現場の瞬間の記録した不可解な投稿映像。助監督が主演俳優を迎えに行った矢先に、入れ替わって”突然”、登場する謎の男性の狂気と可笑しみに呆然としていると画面は亀裂を及ぼし、のっぺらとした顔に変貌しこちらに顔を向けるではないか。ここの目と目が合うという、このような事象自体がもうたまらなく私は好きなのですが(最近だと『闇動画13』の1話目が良かったです)、そのまま謎の男性を追いかけて、外の廊下に出ると何故か異質な空気感を漂わせるその錯覚も含め、この短編全体、全てが特異な状況で構成されていて尾を引かせる作り。どこからともなくやってくる謎の男性という配置、防犯カメラに映る(大学外の)霊の故意と呼べる事故現場、訳の分からない出元からの着信はそれに当てはまる要素のひとつひとつだが、あの生死の境界線を渡る瞬間に横一線で現れるトラックの暴力的な運動のインパクトに普通にやられてしまった。何者かの誘いによりそれが立て続けに起こるのだが、最後は霊と同化しつつ(運転手から彼の存在は気づかれなかい為の解釈)、人力で死が発生する一連も尾を引かせることに関しての重要事項。


 

③霊感テスト

廃墟の一室に遺された「霊感テスト」とタイトル欄に書かれたビデオテープに記録された映像を複製すると微妙にそこに映る被写体の顔の角度が変わるという、前後比較で立ち上がる恐怖映像の一篇。「長時間繰り返し見ることは禁物の映像です」という注意掛けの挿入も妙で、ノイズと音の煽りを絡ませてこれはぞくぞくが止まらなかったです。実質、その変わった部分自体は些細なあれこれなので別に特筆することはないのですが、そのぞくぞくしている間の体感時間は不思議なもので、何にも代え難い映像の反復でした。封印オチに「今もまだ遺っている禁物の映像」という後押しがなされ、ちょっともう見たくないものです。


 

④歌声

深夜一時に歌いながら通り過ぎていく男の存在を暴こうとする若い男2人組の投稿映像。携帯電話での撮影とビデオカメラでの撮影が行われた、2つの撮影・視点による「心霊ビデオ × スプリットスクリーン」ものです。二手に分かれて、別々の場所で霊障に襲われるのでは無くその距離を活かして、片方が襲撃される片方を捉えた映像でありますが、「後日スタッフがもう一つ不可解な点を発見する」という二段落ちをやってます。しかも画面を90度回転してそれが現れるという細工つきなので、1度流し見た視聴側への脇を突いてきて愉しませてくれるのが良い。


 

⑤貫通

マンションかアパートの一室で撮影された投稿映像。同棲中のカップルに忍び寄る霊の存在/気配が全身鏡に映り込み、そのまま部屋の電気が人知れず落ちては、赤外線モードに切り替えた瞬間に恋人の身体を貫通したかのような女の首が出現するという算段。これがうまくて笑えるのは、カメラが性的な視線の役割を担い、彼女の緩みきった胸部へ視線を注いでいる間にズームから引くと、ばったりその瞬間を捉えている所。実に憎いです。で、しかも、リューベン・オストルンドの『フレンチアルプスで起きたこと』(2015)を髣髴とさせる「危険と恐怖の切迫に、一目散にその場から逃げてしまう男性」を配置させては、恋人関係に罅を入れさせる暗い愉悦に浸れる愉快なシーンも混入させている所に関しては違うエリアからの恨み(怨念)があるのでは笑


 

⑥クニコ

帰省した同窓会で小耳に挟む「クニコ」の固有名詞と「クニコ」の死亡説に気がかりになった投稿者が、実家の倉庫に隠された(?)、もしくは閉まってあったダンボール箱からラベルに「くにコ」と書かれたビデオテープを発見する。そこからの投稿映像なのでありますが、これは物語の悲劇性を仄めかしつつ「VHS」という形式を意識して構築した〈アムモ98〉今年最大のドラッギーでアヴァンギャルドな実験作だと思われます。話の全容は不明瞭でかつ断片的なのだけれども、そこで紐解かれる「クニコ」との因果関係から推測するに、つまりは、そういうことなのだろう。その奇妙な一連の出来事はこれといった映像では何も語られない(インタビューで語られる)が、あの最後の乱れまくるノイジーなニュース映像(80年代~90年代)のメタフィクション性のある投入が全ての”死”を語っていて見事としか。可愛らしい「及川くに子」ちゃんの写真が時間経過と共に何故にあんなにも目を背けたくなる様な写真に見えるのか。映像(停止された写真/画像)が歪みから蠢くような肉体の感触を宿し、時には黒(ダーク)色に画面を落とし、笑顔の様相が”死”を嘲笑する表情にすら見えてしまう、あの静謐の夥しさに完全にその席から動けなくさせる力を持った垂れ流し(長回し)である。「アニメのビデオテープ」と偽装されたその中身は祟りか呪いか、そもそもこれは時代の流れと共に不良を起こしているのか否か、取り敢えずこれを視聴者にひとまず垂れ流す様な悪趣味な演出は早送りしたくなるタイム感なのですが、それすらも出来なくさせる(「停止したら…早送りしたら….巻き戻ししたら…何かが起きそう)」脅迫的な繋留の畏怖に鳥肌が止まりませんでした。3分位の実はこの映像の一部分、そのラストの垂れ流しシークエンスのみはYouTubeの公式アカウントにてアップロードされているのですけれど、それは観なくていいです。全体の流れとして絶対に観るべきですね。いやぁ….参りました。