呪ギャル ~芸能怨霊伝説~/能無しは能無しなりに、屑は屑なりに死ね

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2015年に取りこぼしたホラーDVDを2016年一発目に選ぶとするならば…という訳で、こちらの作品をセレクト。製作については

数多くの人気ホラー作品を手掛ける十影堂エンターテイメントが放つ、今年一押しのホラーフェイクドキュメンタリー長編作品! 劇場公開もされた人気シリーズ「ぞくり。」を手掛け、水戸短編映画祭で準グランプリを受賞した、新進気鋭の映画監督、夏目大一朗が創り出すホラー作品! 脚本は、「ぞくり。」シリーズや劇場公開作「ゆがみ。呪われた閉鎖空間」の脚本も担当した、ホラー界の新鋭脚本家・黒木公彦!

とのことで、あらすじは

日々、芸能界でのスクープを追う写真週刊誌記者の夏目大一朗と上河内チカ子。最近の彼らのターゲットは、若者たちからのカリスマ的な人気を誇るギャルアイドルユニット『リキッドドールズ』のマキとモエ。夏目たちはスクープ映像を求め、男性アイドルとの密会現場をおさえるべく尾行する。すると、撮れたのは、次々と男たちを呪い殺していくマキとモエの姿だった! 〝ドローン〟での極秘撮影で撮られたアイドル二人組の密会呪殺現場とは! ? 不思議な殺しの力を得ることができる〝呪いのネイルアート〟とは! ? 芸能界の闇が、怨霊の力を得たギャルアイドルユニットによって暴かれる! ? 週刊誌記者・夏目大一朗の主観視点で描かれる鬼気迫る戦慄フェイクドキュメンタリー・ホラー!

という感じ。以下、ネタバレ解剖・感想。


「動画はしっかり撮る」という労働の意思によってマネーが発生する現代の投稿系ホラーDVD業界では、「ニコ動でも稼げる」という点が現在、大きいらしい。しっかり撮っていれば、最悪売れなくても一応は既製品として認められ公表でき、それを動画投稿サイトに提供することで、マネーは得られるという考えが通ずる現代。カメラにそれを収めるか収めないか、ただそれだけ。その功利主義的な業界で、フリーで戦っているのが、今回の写真週刊誌記者夏目らクルーである。公園でのファーストシークエンスでは、ドローンを用いて、ゴシップを狙うなど、2015年の規制をものともしない貪欲な撮影が垣間見れる。もう既にここまでの「チャプター1」あたりでお気づきだろうが、投稿系ホラーDVDの最新の最終手段が動画投稿サイトである点や、撮影法にドローンがあるというところで、この作品は現代性へのアプローチが如実である。さて、それが本当に作品として、2015年~的なものに昇華されているのかというところでありますが、それは後述ということで。

今回、夏目らがゴシップ記事のネタとして、カメラにおさえようとするのは「国民的アイドルの密会乱交現場の一部始終」(これも如何にも現代的な芸能界の闇である)である。「ヤリまくるアイドル」として噂される〈リキッドドールズ〉のマキとモエによるその現場。対象相手はこれまた人気アイドルグループ、エックスゾーン(Se●y Z●neが元ネタであろう)のメンバーだという。国民的アイドル同士のゴシップ、そんなものが撮れたら、破格の値が付くに違い無い。「エロいディープキス」が撮れるだけで、夏目にしては成功だという位である。夏目らはラジオ番組の撮影を終え、ラジオ局を出てきた彼女たちを尾行することに。彼女たちを乗せた車は駅へ、しかし2人は駅へ降り立つと同時に二手に別れます。夏目らはひとまずマキを尾行することになりますが、まぁ運のいいことに、マキは密会の待ち合わせに選んだ公園へ趣き、エックスゾーンのKO✩SUKEと合流する瞬間を収める訳です。しかしここで、間髪いれず夏目らは理解を超えた出来事に遭遇し、物語は思いもよらぬ方向へ…。さてそれが粗筋にも引用した「呪殺現場」なのでありますが、これが超チープな殺戮描写でグッときました。KO✩SUKEを宙に浮かせるマキの超能力的な紫のエネルギー、そこから地面に叩きつける容赦ない暴力、マキの横位置に出現する顔のようなもの、背後に撮される大木には無数の御札が。KO✩SUKEは即死、身体は血まみれ、全体にモザイクが覆う。ここまでの一連のチープな画面に溢れる情報量は確かに理解を超えていると言えよう。その一瞬の出来事に完全に動揺する夏目、それに気づくマキ、待機していたモエ(どこに居たんだ!とツッコミせざるを得ない)、ここで一気に「目撃者」と「加害者」の構図が前景化し、物語は、その撮れてしまった/盗撮してしまった映像を巡り、推進していくことになります。夏目はKO✩SUKE同様に宙に浮かせられますが、「バックアップと流出」(また現代的な….)で彼女たちを脅し、なんとかその殺戮を回避。「呪殺現場」に何時までもとどまれないので、その映像の処理に関しては後日に引き伸ばされ、山奥で彼女たちは夏目らとまた会うことを約束して衝撃的な昼下がりはそこで一時中断される。

数日後、ドローンで撮影していた霊能者REIKO宅の映像を相方のチカ子に見せる夏目。内容は「呪いのネイルアート」という人を呪えることを可能にする力を身に付けるネイルに関する映像。先日の衝撃とは関係が無いことに違和感をおぼえたチカ子はリキッドドールズの件から逃げている夏目に檄を飛ばす。しかし、夏目は「お前はさぁ、浮いたことあんの?浮いたことある人に偉そうにいえんの?お前さ、そりゃひどいだろ」と泣きべその反論。かなり夏目はダメージを食らっている様子。進展が無い為、しびれをきらしたチカ子は元実話ナックルズ編集長、現東京ブレイキングニュース編集長の久田に電話を掛け、事務所に呼び出して、あの衝撃映像を見せ、何か情報を手に入れようとします。ここで、「KO✩SUKEは自殺されたと報道されている」ことが視聴者側には知らされ、劇中上、「嘘に塗れた芸能界の内幕もの」をメタ的に描いていることが強く打ち出されます。霊感が強く、占いが当たることで売り出されているアイドル(現実にもいるいるですね)が〈リキッドドールズ〉であるという話の後、夏目が撮影した何枚かの写真に写るあの「顔のようなもの」から久田は、原田哲子という生前に活躍した女優の顔に似ていると指摘し、しかもKO✩SUKEと彼女には暗い噂(KO✩SUKEの億単位の借金を肩代わりしている噂)があるという情報を夏目らに提供する。しかし突然燃え出す写真。それに冷静に対処する久田。燃えだした原因は、投稿系ホラーDVDでの後日談でよくいうところの怨念なのだろうか否か、それとも警告なのだろうか否か。ともあれ、情報は獲得し、要約物語は進展へ駒を進める。

待ち合わせ当日、マキが指定した所から200メートル離れた場所へ到着した夏目ら。浮いたことのあるトラウマからまだ駄々を捏ねている夏目がたまらないです。何かあれば警察に連絡することを頼りに、なんとか山奥へ足を運ばせる夏目。ここでの撮影法がまたタブレットで隠し撮り、しかもノートパソコンと同期して隠し撮りを閲覧・録画できる状態にしているという現代的な用意周到振りを披露。何というか、わかりやすいプロの機材でなくとも、そういうことが可能であるということを明示していて面白いと思われる光景です。足を進めると、紙(御札)が一面に張り巡らされたテントを2つ発見。その御札には「原田哲子」と書かれており、そこへ注視していると、突然何者かに足首を掴まれる夏目(※1)。トラウマがまた増えるからやめてあげてと言いたくなりますが、マキとモエとは無事(?)合流。もうひとつのテント内でこの一連について話し合います(めっちゃAVっぽいです)。ちなみに、ずっとここまで盗撮中な訳ですが、完全にカメラ目線になっているマキから予想されるに、当然バレているのでしょうね。それは彼女もスルして取り敢えず原田哲子の詳細を語っていくふたり。原田哲子はまず、「借金苦で”自殺”した」と報道されているとのことである。ここでも「嘘に塗れた芸能界の闇」の片鱗がメタ的に垣間見れるのだが、更にKO✩SUKEとの暗い噂・繋がりに関しては本当だということが、知らされる。証拠映像として撮影された記録映像には「エックスゾーンから強姦を受ける原田哲子の動画」が残っており、エックスゾーンはその動画で彼女を脅し揺すり、金も引っこ抜いていたという。エックスゾーンの「呪殺現場」の因果関係はこの原田哲子にあることがここで要約解る。では、何故、あの超能力のような呪殺を可能にしたのかは、前述したあの「呪いのネイルアート」が関係しているという。指先に施されたそれ。モエはネイルアートにより恨みを持つ霊を呼べるようになった、対してマキはネイルアートにより対象相手を呪える力を持った(普通に呪いなくとも対象相手を動かせる)。2人の役割分担は「モエが恨みを持った霊を呼び、マキがその被害者の前で加害者を始末する」とのこと。その力をもとに、原田哲子の持つエックスゾーンへの恨み晴しを代行しているのが彼女たちなのである。では、何故、彼女たちはその俗に言う芸能界の「恨みの代行」をやっているのか。それは遊び半分か原田哲子への同情か、明確には例示されていない。しかしここでは、その動機はそれほど重要では無い、そもそも、それを可能にする「呪いのネイルアート」の発案者である黒幕・REIKOこそに疑問を抱くのが普通だ。多分恐らく、「呪いのネイルアート」とREIKOにこそ何かが秘められているのだろう。

※1先ほど、夏目の足首を掴んだのはテントに召喚された原田哲子である。

そうして、テント内では霊界から夏目の親父を召喚するなど(爆笑した)、とびきりのサプライズに混乱しながら、そこにエックスゾーンのメンバーであるユージが現れる。「3Pやる?」とふざけるユージだが、KO✩SUKE同様に容赦なく殺戮され、生首を放り投げられる始末。埋める手伝いをさせられる(ここは省略される)夏目、チカ子のもとに戻ってきた頃にはパニック状態でタブレットを置きっぱなし。その代わりに、動揺してからか彼女たちが持っていた手帳をパクってきてしまう(手癖らしい笑)。その手帳に挟まれていた「ギャルメイクしていない写真」も伏線か。ちなみに盗撮されたことも彼女たちに完全に気づかれ、次やったらぶっ殺されることを夏目は警告される。最後に残ったエックスゾーンのイチオ(チカ子がファンの)を助けようとするチカ子、殺しの警告を受けている夏目。クルーのふたりにも亀裂がはいりそうな頃、いよいよ物語は佳境へ。「イチオ救出劇」に加担しないのであれば最悪、労務裁判を起こすと夏目を脅しなんとか説得。かなりの省略を経て、再び取り戻したタブレット(システム手帳をもとにマキから「これ以上邪魔したら殺す」と最後の警告つきで送られてきたという)で某テレビ局/赤坂駅前にて撮影を再開。夏目はこの一連の映像について嘘っぽすぎて一銭にもならないであろうことに嘆いている。しかし「真実の映像」であることをぼやくチカ子、このクルーらしい、少し齟齬のあるやり取りが良いではないですか。そして、さきほど殺されたユージは現在、病気として報道されているとのこと。徹底されたリアルに存在するフェイクに、加速度が増していきます。あと、マキの手帳は「殺しのリスト」であり、そこにはイチオの殺される日が書いてあったらしい。そうこうしている間に、偶然にイチオを発見するクルー。後を追って、イチオに状況を話そうとするも、クルーはイチオに訝しがられる。「真実の映像」(報道された嘘とは違う)をイチオに見せ、なんとか興味を持たせることに成功。舞台は喫茶店へ移動し状況説明に。ドッキリとかではないことを了解させ、マキとモエに関すること、御札やネイルアートの効力、「殺しの予約」にお前が対象となっていることを伝えていく。ここで夏目はイチオに、「マキとモエのネイルアートを剥がさせる代行」を誘導しているのが面白い。「行かない」という選択を選ぼうとするイチオに、殺される焦燥感を抱かせる為にユージの呪殺現場を見せる。もう「行かない」選択を遮られたイチオは、仕方なくその実行に決心する。ちなみに、イチオはあの「強姦現場」を止めようとしたとのことである。

要約、実行日、労働基準法に触れることでチカ子に脅され、マキとモエからは命を狙われている夏目はアセトン(ネイルアートを剥がす除光液)とニッパーを武器に、マキとモエのネイルアートを剥がすのではなく指を切ろうとしている混乱振りを見せる。愛車のポルシェで颯爽と登場する筈が何者かにパンクさせられ、局のADのマネージャーの車に乗り込むイチオ。テレビ電話でつなぐと、そのハンドル席に映っていたのは「ギャルメイクをしていない」モエであり、実は返却されたタブレットにはクラウド設定されており、イチオと話ていた現場も全部把握済みだったという。完全に先回りされていたクルー。こういうインターネットを介した一手、一手がものをいう先手勝負を組み込むホラーDVDはやはり面白いな….感慨…。としている暇もなく、イチオはマキとモエに拉致られ、呪殺現場へ連れて行かれしまう。急いで後を追いかけるも、思い当たる場所は彼女たちが口にしていたキーワード「山」しかない。手帳に記された緯度と経度から呪殺現場をあたるが、立ち入り禁止の行き止まりに車を防がれてしまう。もう「帰ろうよ~」と駄々を捏ねだす夏目、しかしチカ子は諦めず夏目が持っていたドローンで探索を試みることを提案。そうするとあっけなくテントを発見。だがスマートフォン(おそらくクラウド設定された)と同期していた為かあっけなくマキにばれて、ドローンをあの力で破壊されてしまう。「高かったのに…なんか腹たってきたな」と愚痴をこぼす夏目はチカ子と共に遂に立ち入り禁止の先へ進むことを決意し、物語はマキとモエとの終盤戦へもつれこむ。哲子の最後の「恨みの代行」を阻止するべくなんとか説得しようとする夏目だが、「趣味で作っていたい自作曲」を流され大恥をかくことに。やめろよ!と停止を強行するも、呪いの力ではなく物理的な暴力である平手打ちを喰らう笑いどころ。アセトンも瞬時に破裂させられ、ニッパーも奪われ、もう為すすべもない状態。強姦映像の音が流れる空間、それでもイチオを弁護しようと、彼の気の弱さを主張する。しかし、結局は能無し、「こんな能無しは死んじゃえばいい」と切り返すマキ。しかしそこでの夏目の言い分はこうである。

「能無しだからって死んで言い訳ねえだろバカ野郎!能無しだって絶対に心配されながら、能無しは能無しなりに屑は屑なりに生きてんだよ!お前らだってちょっと前までは役立たずのギャルアイドルじゃねえか!イチオは今回は止められなかったけど、今度こういうことがあったら絶対とめるし、そういうふうに成長するよ、なんだったら警察に行かせるし、許してやってくれよ~!」

その人間の不甲斐なさを受け止めた将来性に対する擁護の弁解が通じたのか、「もう飽きた」(つまり遊び半分だったのであろうか)とマキは言葉を漏らす。そうして、イチオの呪殺は停止するかと思われたのだが!イチオの告解はこうである。

哲子!(叫んでて「てつお」にしか聞こえないのだが)、本当にごめん!止められなくて!俺だけヤッてさぁ!そのあと、ちゃんとあいつらを止めればよかったなぁ!

なんと、自分が一番最初にヤッて、冷静になったところでKO✩SUKEとユージを止めようとしたというのである。この事実に冷静になり、イチオに呆れた夏目はマキとモエに「呪殺」をどうぞご自由にと言わんばかりにお願いし、マキとモエは哲子の最後の「恨みの代行」を無事遂行するのであった。

本作は、意識的な音楽の使い方も効果的に作用し、最終的にはとんだ滑稽な話に着地しているのだが、イチオの呪殺シーンのフェードアウト後の帰り道、立ち寄ったコンビニのシークエンスで、夏目らはこの「芸能界の屑を処分していくマキとモエの活動」を手伝うことを決意する。そうして、『呪ギャル』のシリーズ化を暗に告げて、この序章たる序章の幕が下りていくと思いきや、駐車場から車を発進する瞬間、カメラが無造作に後ろに向いた瞬間、捉えられたものに身震いしてしまう。そこに映ったのはREIKO。黒幕は常に彼/彼女らの背後で無機質な眼差しでこちらを見ているのだ。気づいていないクルー。これからの不安が確実に膨張するその優秀なエピローグに思わず声を漏らした。「ホラー」はこうでなければ。


 

最初に前述した2015年~的な作品への昇華については、もうここで言うまでもないだろう。低予算むき出しのチープな合成と編集、稚拙な演技をカヴァーする2015年~(現代の最前線)的なアイデアが、それと同時に物語を誘導している点で、もう充分である。

個人的な望みは、コントすれすれの心霊系とはいえ、「アイドル」という薄皮一枚のキャラクターの真偽性を武器に、あらゆる真実の解明に乱暴に切り込んでいってほしいのは勿論のこと、ここにあったその現代性へのアプローチを忘れずに、今蔓延る「クルーもの」の作品に新しい風を吹かせてほしい次第です。マキとモエのルックスは申し分無いですし、夏目のビビリキャラは最高(その点鼻につく所もまた妙)、チカ子はもっと彼/彼女らの揚げ足をとっていけば「クルー」としての充分な配置になりえる筈。と勝手な妄想をしてみるも、全部裏切ってほしいのが本望です。まずは、ラストカットの意図が解明される続編が無事製作・公開・販売されることを待ち望んでます。

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